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今月の一冊「お坊さんのための仏教入門」 [今月の一冊]

正木晃「お坊さんのための仏教入門」

 死者供養・先祖供養を仏教の立場から強く肯定する珍しい一冊。「仏教は本体死者供養や先祖供養を説かない。葬式仏教が仏教をだめにしている」と力説する現代の風潮に真っ向から反対する。著者の正木晃は筑波大で学び、専門はチベット・密教。 
 仏教は葬儀から始まった、というタイトルから本書は始まる。
 釈尊は自分自身の遺骨を残し仏塔に祀るように指示している。それは『大パリニッバーナ経』、中村元の訳書で言えば『釈尊最後の旅』に書かれていることで自明のことだ。さらに『増一阿含経』には「父母を度すべし」と書かれ、この時代の仏教に父母供養、先祖供養の思想が既に芽生えていたことがうかがえると指摘する。
 葬儀も儀礼も仏教にとって不可欠と正木は語り、そこには東日本大震災で僧侶が「死者供養」に大きな役割を果たしたことを指摘し、そこから「被災地の幽霊」(104頁)「お迎え」(121頁)の話へと展開する。
 また、霊力を否定する現代の仏教は哲学思想になってしまい、それ故に仏教本来が持つ魅力を失ってしまっていると指摘する。なぜ哲学思想になってしまったのかと言えば、西欧が理想とする仏教学の影響を、日本仏教が大きく受けたからで、合理的な説明を良しとする現代日本仏教に疑問を投げかける。
 その投げ掛けの中で重視されるのが「鎮魂」「供養」「回向」だ。鎮魂とはマイナスに沈んだ魂をプラスマイナスゼロにすること、回向とはさらにプラスに引き上げることと、第一生命経済研究所の小谷みどりの言葉を引用しながら、「哲学」や「思想」では救えない魂を語る。(102頁)。一方、鎮魂や回向の必要になるのは「定力」「仏力」であるという。それらは修行によってのみ得ることのできる力だ。
 引き続いて「罪障ふかき中有」という沢庵和尚の言葉をバックにして、「ありとあらゆる宗教の原点とも言える死者供養、鎮魂儀礼が、近代仏教が否定してきた祈禱に類する行為が、いままさに必要とされているのです。いかに幽霊を成仏させるのか。これこそ喫緊の課題にほかならないのです」。(111頁)と熱く語る。
◎春秋社 1890円

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